ロータリーエンジンの圧縮率はエンジンオイルで決まる!

ロータリー車に乗っていると気になるのが・・・

 

ンジンの圧縮  です。

 

このエンジンの圧縮が気になるのは、多くのロータリーユーザーの方々が

“圧縮が低い=エンジンが終わっている” ということを知っているからでしょう。

 

さて、ここからは、圧縮のことやロータリーエンジンにとって

エンジンオイルはどんな役割を果たしているのか?などを解説していきます。

 

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エンジンオイルと言うと、多くの方々は「潤滑をする」という

イメージが強いと思います。

 

しかし、ロータリーエンジンにとってのエンジンオイルの役割は、

「潤滑」という役割よりも、大きな役割があります。

 

その役割は、大きく2つあり・・・

 

  • 1つ目がエンジンの熱を吸収して冷却させている
  • 2つ目が燃焼室内部のすき間を埋めて圧縮漏れをふせいでいる

 

の以上です。

 

 では、1つ目の・・・

「エンジンの熱を吸収して冷却させている」という冷却について解説しましょう。

 

まず、オイルエレメントでろ過されたエンジンオイルは、

前後のハウジングに送られて、ローターを回転させている

エキセントリックシャフトの内部にあるオイル通路へと入っていきます。

exen01.jpg

このエキセントリックシャフトに入ったオイルは、

三角型のローターに圧入されたローターベアリングを潤滑させながら

ローター内部にある大小9個の部屋に入って、ローターを冷却させています。

 

要するに、エンジンの中心部の冷却はエンジンオイルだけで行っているわけで、

(冷却水は、エンジン中心部には入りません)

ここでの大きな役割は、エンジンの熱を吸収するという冷却と言うことです。

 

 さて、次に2番目の・・・・

「エンジンの燃焼室内部のすき間を埋めて圧縮漏れをふせいでいる」についてです。

 

ロータリーエンジンがレシプロエンジンと決定的に違う1つは、

“燃焼室にエンジンオイルが直接噴射している”ということです。

 

この燃焼室に送られるエンジンオイルは「メタリングオイルポンプ」という、

オイルポンプによってエンジン回転や負荷に合わせて、

オイルノズルから燃焼室に噴射さることで、

 

ローターハウジングの内壁と、ローターの側面にある凹み部分の燃焼室と

アペックスシールに付着して密閉させることで「すき間」を埋めて

混合気(空気と燃料が混ざった気体)が圧縮される際に

漏れ出ないようにしているのです!

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      下手な手書き図でスミマセン(汗)

 

このように、ロータリーエンジンにとってエンジオイルに求められる働きは

冷却、圧縮を漏らさないという「密閉力」ということです。

 

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 エンジンオイルは「星の数ほど」と言えるぐらい、沢山販売されています。

そして、どれを見ても“似たり寄ったりの宣伝文句”で

ユーザーとしては、一体どれを使用したら良いのか悩みます。

 

特に「特殊」と言われているロータリーエンジンに乗っている方々は

エンジンオイル選びをどうしたら良いのか?分からないことと思います。

 

そんな沢山あるエンジンオイルですが、

ロータリーエンジンがエンジンオイルに求める役割は

「冷却と密閉力」の2つであると、先ほど話をしました。

 

では、冷却力と密閉力が優れているオイルなどあるのでしょうか?

 

ここでは、様々な種類があるエンジンオイルについて解説しながら

もう一歩踏み込んだ、オイルの話をします。

 

 さて、現在主流になっているのが「化学合成油」という

化学的に作り出したエンジンオイルです。

 

この化学合成油、どこのメーカーも・・・

 

「冷却に優れている、高温時でも耐久性がある、エンジンをクリーンに保つ洗浄力が強い

 オイル劣化の進行速度が穏やか、油膜切れを起こさない!」などと提言しています。

 

では、本当にそうなのでしょうか?

 

そもそも、エンジンオイルというのは「パラフィン系基油」という

アメリカなどでエンジンオイルのために採取されていた基油が元になり

作られていました。(これが鉱物油です。)

 

しかし、この採取量が、ある時期から非常に少なくなってしまい

そこで、石油メーカーが化学者達に研究をさせて、このパラフィン系基油に似た

オイルを化学的に作れるようにしたことが、化学合成油の始まりです。

 

化学合成油の基油は、様々ありますが基本的には同じで・・・

 

石油原油を蒸留して「ナフサ」という沸点範囲が広いガソリンを取り出し

それを更に化学的に分解したり合成したりして分子構造等を整え

成分的に安定した品質の基油を作っているのです。

 

この化学的に作り出した化学合成油の基油の特徴は、

“全く粘度が無く、分子構造が非常に細かい”ということです。

 

この化学合成油の基油の特徴が、実は、非常に重要なので

覚えておいてください!

 

 これに対して・・・、鉱物油の基油の特徴は

“粘度が有り、 分子構造が大きい”ということです。

 

何で、ここで化学合成油と鉱物油の基油の特徴を言ったかと言うと

この基油の特徴こそが、冷却力と密閉力を左右しているからです。

 

実は、この特徴のうち「分子の大きさ」の方が、特に冷却力と密閉力に直結しています。

 

まず、現代は「ナノ分子」などという非常に細かい分子をもったものが

珍重されていますが・・・、

 

現代の高性能で高出力なエンジンにとって、

分子が細かいエンジンオイルは大きなマイナス点です。

 

と言うのは・・・、 

分子が細かくても、大きくてもエンジンオイルにとって大切な「油膜」は作れますが、

 

分子が細かい場合は、小さな分子同士が手をつないで膜となるので

分子と分子の間にできる「すき間」があまりないので、

オイル自体に熱を持った時、放熱性に欠けます。(化学合成油)

 

逆に、分子が大きいと、分子同士が手をつないだ際

分子と分子の間にできる「すき間」も大きいので、

熱を持った時に放熱性に優れています。(鉱物油)

 

また、下手な手書きの図で恐縮ですが、

この分子の大きさの違いによる放熱性につてカンタンに図にしてみました。

oilbunshi.jpg

下手な図で申し訳ないのですが、化学合成油と鉱物油の

分子の大きさと、すき間の違いをお分かりいただけたでしょうか?

 

お分かりいただけたところで、実は、この分子の大きさの差によって

生じるもう1つの問題があります。

 

それは、膜の強さです!

 

膜を作る際、分子と分子がつながりあって膜を形成させますが

分子同士がくっついてくれるのは、分子から腕のようにものが出て

その腕を組むことによって膜が出来上がります。

 

これは、分子の大きさに関係なく同じですが、

ただし、分子の大きさによって膜の強度が変わります。

 

分子が小さい場合は、分子からでる腕も小さく非力です。

これに対して、分子が大きいと腕も太く力もあります。

 

力が小さいのと大きいのでは、当然、膜の強度も変わります。

膜に何らかの負担がかかった場合、力がある方が耐久力もあります!

 

エンジンオイルならば、熱と言う負担が油膜にかかった場合、

分子が大きい方が有利です。

 

こういった違いもあります。

 

いずれにしても、エンジンオイルは熱との戦いが全ての役割に影響を及ぼすのです。 

だから、放熱は、繰り返し熱を吸収するエンジンオイルにとってとても大切です。

 

また、ロータリーエンジンはレシプロとは違う、

中心部はエンジンオイルのみによる冷却で、外周は冷却水のみで冷却 

といった、分離型の冷却方法なので、

 

エンジンオイルと冷却水に求められる役割は、レシプロよりも大きいのです。

 

更には、エンジンオイルに絞って言えば

燃焼室に直接噴射することで、燃焼室内のすき間を埋めて

“圧縮漏れをふせぐ”という大役もこなさなくてはなりません。

 

オイルという物は、どんなオイルでも“高温になると劣化する物”で

高温になったオイルは、その役割も果たせなくなります。

 

ですから、冷却力と密閉力がレシプロ以上に求められる

ロータリーエンジンにおけるエンジンオイルは、

放熱でき、高温に対する耐久力のあるオイルである必要があるのです。

 

以上のことを考えると、分子が細かい化学合成油を使うのは

特に高温なロータリーエンジンの場合、非常に危険と言えます。

 

全部が全部の化学合成油を否定するつもりはありませんし

中には、熱の耐久力がある化学合成油もあります。

 

しかし、「ただ主流で使われているオイルだから」という何の根拠もなく

「みんなが使っているから大丈夫」といった非常に日本人的な発想だけで使うことは、

 

多くの場合・・・

 

“エンジンが壊れないか心配しながらエンジンにダメージを与えている”

といった、自虐的行為に近いことになります。

 

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ここまで読まれた方なら・・・

これまでは、なじみが薄かった「鉱物油」について少し興味が出てきたことと思います。

 

また、「化学合成油」と「鉱物油」は一体何が違うのか?

よく分からない方も多いことと思います。

 

その違いは、ここまでの解説で・・・、

 

化学合成油は分子が小さく、鉱物油は分子が大きいく

分子の大きさが放熱性を左右させて、オイル自体の温度を決めている!

 

という事が、すでに分かって頂けたかと思います。

 

では、、もう1つの違いであって

“化学合成油の基油には粘度が全く無く、鉱物油の基油は粘度が有る”

 

この違いについて解説します。 

 

まず、オイルの粘度ですが、現在、販売されているほとんどのオイルは

「15W−50」などマルチグレードと言われている、

一年中どんな気候でも対応可能なオイルが販売されています。

 

また、この表記をできるのは、ある一定のテストをクリアした物だけです。

 

しかし、現実的には、同じグレードのオイルだとしても

オイル温度の上昇率や、熱に対する耐久性など、製品によってマチマチです。

 

しかも、「販売価格が高いオイルが温度に対する耐久性が優れている」と

いうこともなく、販売価格が高い高級オイルでもオイル温度の上昇率が

激しかったり、高温に対する耐久率が低いオイルは沢山あるのが、実際のところです。

 

では、何で同じグレードなのに、そんなに製品によってバラつきがるのでしょうか?

 

それは、まずは温度の上昇率に関しては、前の章で話したとおり

分子の大きさの違いが、大きな原因です。

 

中には「化学合成油は、一度、温度を持つと、なかなか下がらない」と

聞いたことがある方もいると思いますが、この原因は、

分子の大きさによることです。

 

このように分子の大きさは放熱を左右するので

ひいては「冷却力」も左右することになりますが、

 

実は、基油の粘度具合も冷却に影響を及ぼします!

 

まず・・・、

 

エンジンという機械は、金属製でしかも非常に高温になる部品です。

そんな金属製の高温な機械を常にスムーズに稼動させることができるのは

エンジンオイルによる力が大きいのです。

 

何で、エンジンオイルが、こんな過酷な機械をサポートできるのかは

エンジンオイルに粘り気があるからこそ、エンジンを守れるのです。

 

オイルに粘りが無かったら、高温になるエンジンの金属に

油膜を作る、潤滑する、などの最もオイルにとって重要な仕事ができません。 

 

だから、エンジンオイルにとって「粘り気」は非常に大切なもの。

 

しかし、化学合成油の基油は、この大切な粘り気が全く無いので粘り気を出すために

金属をサビから守ったり、金属の汚れを落とす洗浄などを行う

“粘り気が強い添加剤”を大量に調合することで、粘度を作り出しているのです。

 

その化学合成油に混ざっている添加剤の量は、オイルにもよりますが

おおよそ・・・基油が30%、添加剤が70%というほどで

“化学合成油はの実態は、ほとんどが添加剤”というほどです。

 

これに対して、鉱物油は、もともと基油に粘りがあるので

これもまた、オイルによって配合量に違いはありますが、

おおよそ・・・基油が70%、添加剤が30%で、真逆とも言える配合量です。

 

この添加剤も、かなりの種類があり、添加剤なくして

エンジンオイルを作ることは出来ないほどの存在です。

 

そんな重要な添加剤ですが・・・、

 

添加剤の主成分は、化学合成油と同じ「エチレン系」と言われる、

ビニール袋=ポリエチンレンと同じ主成分のものを化学的に合成して

作られた、高分子なものなのです。

 

重要ポイントなので、おもう一度言いますが・・・ 

 

化学合成油は、ビニール袋=ポリエチレンと同じ主成分のものを

化学的に合成して作られたもの。

 

なんで、2回も言ったのかは、

 

ビニールを燃やすと、どんな風になるかご存知ですか?

(ご存知の方は多いと思いますが・・・)

 

答えは、黒い煙が出てきて、化学的な臭いが鼻をつきます。

そして「黒い煙」が出終わって燃えつきると黒いススのようなものが

燃えカス?として残ります。

 

この黒いススがポイントです。

 

実は、エチレン系を主成分としている化学合成油が、

熱を吸収して高温になったとき「スラッジ」と呼ばれる

黒いススのような物質が発生します。

 

ビニールの燃えた時にでる黒いススとは、少し成分は違うでしょうが

いずれにしても、エチレン系が高温になった時に発生する

黒い物質が「スラッジ」なのです。

 

このスラッジの発生は、私たちのテストでは、オイルによって少し差はありますが、

化学合成油の場合、油温約110℃前後で発生します。

 

110℃前後でスラッジが発生するということは、日常的に乗っていても、

少し負担がかかると、ロータローエンジンの場合はこの程度の温度になるので、 

化学合成油の場合、スラッジの発生は普通に乗っていても十分に発生してしまいます。

 

オイル交換をするとき、まず、それまで使っていたオイルを抜きますが、

そのオイルは、ほとんどの場合、真っ黒です!

 

「廃油が真っ黒なのは、当たり前!」とお思いの方もいるでしょうが、

オイルが黒くしている原因の1つは、このスラッジによるものです。

 

また、このスラッジの発生率は、オイルによって多かったり

少なかったりするので、廃油の黒さは、実は、かなりマチマチです。

 

と・・、少々余談になてしまいましたが・・・

 

このスラッジは、オイルの耐久性が無くなったからできてしまった物質です。

 

要するに、カンタンに言うと、そもそもの成分が熱によって破壊され

違う物質になってしまったものだからです。

 

なので、オイルの中にスラッジが沢山発生してしまうと、

オイルの役割を果たせなくなってしまいます。

 

また、ロータリーエンジンはエンジンオイルが燃焼室に噴射して

ローターハウジングの内壁やローターの燃焼室に付着し、

圧縮された混合気と一緒に燃えて無くなるので、

 

どのようなオイルを使っても、ある程度オイルの燃えカスが

ローターなどに付着してしまいますが、

 

そもそもスラッジを多く含んだオイルが燃焼室に噴射して燃えれば

燃えカスは通常より多く付着してしまい、

 

その結果・・・、

 

燃えカスが膜を張ったようになり、保温状態になり冷却効果の

妨げとなってしまいます。

 

また、燃えカスの付着は、燃焼室の壁がボコボコになってしまうので

エンジンオイルの付着が均等に付着できなかったりして

圧縮漏れの原因になってしまいます。

 rotar01.png

スラッジが沢山付着して圧縮漏れを起こしてしまったローター

 

このように「エチレン系のかたまり」といった化学合成油は、

全て悪いワケではありませんが、

 

オイルの粘度を出すために、添加剤を大量に配合していることが原因となって

スラッジが発生してしまい、冷却効果、圧縮漏れといった困ったトラブルを

招いてしまうことが多いので要注意です。

 

もちろん、鉱物油にもエチレン系の添加剤が配合されていますが、

基本的に絶対量が全く違い、全体の3割程度なのでスラッジの発生量は、

エチレン100%のような化学合成油より少ないのは当然です。

 

尚、鉱物油も様々あるので、市販されている全ての鉱物油が

良いわけではないことを補足しておきます。

 

engineoil04.gif

 さて、長くなってしまったので、このページのまとめを最後にします。

 

まず、みなさんが気にしている、エンジンの圧縮ですが、よく言われるのが

「アペックスシールの磨耗による圧縮漏れ」ということで、

確かにシール類が磨耗して圧縮漏れを起こしてしまっているケースもあります。

 

ただ、このシール類の磨耗も「ロ−タリーエンジンは高温である」という特質に合った

エンジンオイルを使用していれば、かなり軽減されます。

 

それは、スラッジが発生しやすいエンジンオイルを使っていれば

ロータリーの場合、燃焼室にエンジンオイルが噴射され、その結果、

燃焼室の壁にスラッジが付着してボコボコになり、密閉力が失われる。

 

また、スラッジの発生は、オイルが劣化している証拠ですがら、

当然、潤滑力も欠けているから、アペックスシールの磨耗も防げない。

 

以上の点からも、ロータリーにおけるエンジンオイルの役割は重要で

選択もきちんとしないと、エンジンブローへめざしているようなことになってしまいます。

 

それでは、ここまでのまとめです。

 

1、エンジンオイルの耐久性は、エンジンオイルの分子の大きさで変わる

2、ビニールと同じ主成分の多くのエチレン系の化学合成油は、
  温度上昇と共にスラッジが発生する

3、エンジンの圧縮を漏らさないようにしているのは、エンジンオイル

4、スラッジの発生は、冷却効果の妨げになる

5、スラッジの発生したオイルは、劣化していてオイルの役割を果たせない

 

以上ですが、いずれにしてもエンジンオイルを適当に選択して使用することは

実は、かなりの危険行為であることを忘れないでください!

 

 


次はエンジンブローの具体的対策方法! をご覧ください!