ロータリーエンジンにおけるプラグの負担率と劣化、熱価数の真相について

 ロータリーエンジンは「プラグが一つの燃焼室に2本ついている」

話を前半で話をしましたが・・・、

 

そのプラグを点火させる方法自体は、

レシプロエンジンと特に変わりはなく同じ方法です。

 

また、ロータリーエンジンもレシプロエンジンと同じように

 

「吸入→圧縮→膨張(爆発後)→排気」の4行程が1サイクルで、

燃焼室内の作動自体は同じですが、

 

三角型のローターが、まゆ状のローターハウジング内を回転しているので、

ご存じの通り、常に他の部屋が2ツあり、

上記の4行程1サイクルが同時進行で稼働しています。 

 

従って、ローターが1回転すると、3回の爆発が起きるので、

点火も3回になりますから消耗も激しくなり、

レシプロエンジンより、プラグの受ける熱量等の弊害も、かなり大きいです。

 

そのプラグが受ける負担量は、

レシプロエンジンも様々な形式があるので比較するエンジンにもよりますが、

 

おおよそ・・・

 

レシプロエンジンより約2倍相当になります!  

 

ですので「プラグをまめに交換するように」と言われているのです。 

 

 また、この負担量がレシプロエンジンのプラグより大きいので、

プラグに付着する「カーボン」と呼ばれる「電極面の汚れ」が

プラグの劣化の進行速度もレシプロより厳しいのが実態です。 

 

それは、カーボンは、基本的に

「混合気の空気と燃料の比率が燃料の方が濃い状態」の時に

発生してしまう物質のことで、ロータリーもこれは同じですが、

 

ロータリーエンジンの場合は、

燃焼室でエンジンオイルが一緒に燃えるので・・・、

 

エンジンオイルの質が悪くスス状のスラッジ(カーボン)が発生しやすいオイルや、

劣化したオイルを使用していると・・・、

 

エンジンオイルが燃焼したときに発生するスラッジ(カーボン)が

プラグに付着してしまうのでロータリーエンジンは

プラグの交換と良質なエンジンオイルを使用することが要になります。

 

この他にも、実は・・・、

 

「プラグの熱価数」が走り方にあっていない場合も

カーボンは発生します。

 

 プラグのことを話す上で「熱価数」は、

非常に重要なので、ココから先はさらによく読まれてください。

 

そもそも、このやっかいなカーボンは、

純正プラグだろうがレーシングプラグだろうが

プラグの中心電極の温度が500℃になると

自然に燃えて無くなります。

 

この「500℃」という温度を「自己洗浄温度」と言われています。 

 

要するに、プラグの中心電極が500℃という自己洗浄温度に達して

カーボンを焼き取りながら点火できれば、

カーボン付着による失火等が起きずにベストな状態で点火ができるのです!

 

 

そして、この自己洗浄温度と熱価数は密接な関係で

自己洗浄温度の500℃に達するスピードの度合いを

表している値が「熱価数(ねっかすう)」と言うワケです。

 

 熱価数の値については・・・、

 

数字が低い方が「低温向け」で、一般的に「焼け型プラグ」と言われ、

燃焼ガスにさらされる面積や、ガスが溜まる部分を大きくして、

放熱をおさえることにより「プラグが直ぐに暖まる構造」になっており、

 

自己洗浄温度の500℃に、より速やかに達して、

低速時でも不要なカーボンを焼きながら除去して点火しています。 

 

これに対して・・・、

 

熱価数が高い「高温向け」は「冷え型プラグ」と呼ばれ、

燃焼ガスにさらされる面積や、ガスが溜まる部分も小さいので、

熱の害を受けにくく放熱も早いから

 

「プラグ温度が上昇しにくい構造」になっているので、

自己洗浄温度の500℃に達するのも遅いので、

高速、高回転にならないとカーボンを除去しながら点火することはできません!

 

以上のように、低温型プラグだろうが高温型プラグだろうが

プラグは自己洗浄温度に達して、きちんと点火できることが大切です!

 

尚、自己洗浄温度は「下限温度(げげんおんど)」とも言われ

この逆に「上限温度」もあります。

 

この上限温度は、950℃が限界でプラグの中心電極が

これ以上の温度になると・・・

 

プラグという電極がなくても勝手に燃焼室内で点火し爆発してしまう

「プレイグニッション現象」という、エンジンに大きなダメージを

(ひどい場合はブロー)起こしてしまいます。

 

以上のようにプラグの許容範囲は、500℃〜950℃で

この許容範囲温度を適正に保つためにも

 

エンジン温度の対策を施すことは、エンジンの寿命につながると言えます! 

 


 

◆次の第3章のロータリーエンジンには純正プラグとレーシングプラグ

 のどちらが合っているか? 」を読まれたい方はコチラから!

 

ロータリーエンジンにおける燃焼室とプラグの関係

 プラグの役割は、みなさんご存知の通り

「燃焼室に圧縮された混合気(空気と燃料が混ざった気体)に

プラグで点火させて爆発させる」といった働きです。

 

これは、ほとんどの方が知っているでしょうが、

ロータリーエンジン燃焼室に出ているプラグは、

一体どうなっているのかご存でしょうか? 

 

ここでは、ロータリーエンジンに特化して解説しているので

ロータリーの構造だけになるりますが、

 

燃焼室内に出ているプラグとの関わりを知ることが、

プラグの正しい知識を身につけるにあたって非常に大切

重要なことなので解説しておきます。

 

まずは、 ロータリーエンジンの燃焼室にプラグは

一体どのように出ているでしょうか?

 

実際の写真と、手書きの体裁の良い図ではありませんが見てください。

haujing.jpg

plug_kaisetsu.jpg

 

いかがでしょうか?

写真の方は、誰でもお分かりの通り、

燃焼室内のプラグの電極面の穴の大きさが全く違います。

 

そして、手書きの方の図は(良く見ないと分からなくて申し訳ない)

プラグの電極面が両方共に燃焼室に直接的に顔を出さずに、

引っこんでいる状態なのが分かります。

 

この形状は、RX−7もRX−8もロータリーなら共通です。

 

 これは、一体どうしてなのか?

まずは、何でプラグが燃焼室に顔を出さずに引っ込んでいるのかは・・・、

 

ローターの回転によってガス等の漏れが起きないように

気密度を保っている3か所の頂点にある

アペックスシールとプラグが接触しないようにしているからです。

 

次に、ローターハウジング内のプラグの穴の大きさの違いが

なぜ違うか?解説します。 

 

まず、プラグの点火順番ですが・・・、

 

ローターの回転方向は常に「時計回りの右回転」で、

最初に点火するのは、リーディング側(下側)の方で、

やや遅れてトレーリング側(上側)が点火します。

 

この点火順は、どんな時も同じですが

「点火のタイミング(点火時期)」は、様々な運転条件で変わります。

 

hosoku_banner.gif 

※点火タイミングは、吸気容量を司っているスロットルボディの後ろにある

「スロットルセンサー」がアクセル状態を計測してコンピューターに送って、

点火のタイミングを変えている。

こういった点からも、スロットルボディが正しく動くようにすることは重要だ。

 

 

それは、発進時や坂道を走る時や平らな一本道を走る時など、

クルマにかかる負担などが刻々と変わるから、

 

常に同じように点火して、常に同じ爆発力では、

力不足の時もあるし、そんなに力が必要ではない時もあるからです。

 

用は、この「常に変わる運転条件で爆発力を変える必要がある」から

プラグの穴の大きさも変えています!  

 

また、1つの燃焼室に対して2本のプラグがありますが、

このうち主導件を握っている方のプラグは、リーディング側です。 

 

リーディング側は、最も混合気が圧縮され、

ガス濃度も最も濃い状態の中での点火をする方で、

 

シッカリとした爆発をさせるために存在しているプラグなので

常に強い点火を要求されているので、プラグの電極面も

トレーディング側よりかなり大きいプラグホールとなっているのです。

 

ですので「トレーリング側」は、補佐的なプラグと思ってもらえば良く、

よってプラグのホールも小さいのです。

 

しかし、低速〜中速時などは、

 

重いクルマを動かし始めたり、坂道を上る時など「より大きな力」を必要とするので、

ほぼ同時に近い状態でトレーディング側も点火することにより、

爆発威力を大きくすることで負担がのしかかるクルマをスムーズに動かしています。

 

このようにトレーリング側のプラグは、補佐的な物ですが、

点火タイミングによって爆発威力を変える大きな役割も果たしています。

 

  さて、次に、中速〜高速時の話をしましょう。

 

中〜高速域になると、

クルマは、完全に「動きと走り」が共に「波に乗っている状態」なので、

低〜中速域になる時ほどの大きな力は要らなくなります。

 

簡単に言えば「余力で動いている状態」となるので、

トレーリング側のプラグは、さらに補佐的になります。 

 

なので、トレーリング側の点火のタイミングも

低〜中速域になる時よりも、 緩やかになって

「最後に肩を少し押してあげる程度の力で十分」になりますが・・・

 

これが、リーディング側のようにトレーリング側も大きなプラグの穴で、

早いタイミングでどんどん点火すれば

過剰な力によってエンジンダメージにつながるので、

中〜高速域でも、プラグの穴が小さい方が良いのです。

 

いずれにしても、プラグの穴の大きさと点火タイミングがかみ合って、

爆発力をコントロールしているのです。 

 

少々複雑な話しでしたが、このような話をすると頭デッカチになって

“何にもしない評論家”になってしまう傾向があり、

それでは、愛車が快調にならなくては無意味なので補足しますが、

 

ここまで解説したプラグの作用が正しく機能するのは、

「あくまでも、良好な爆発条件が整っている上」ということで、

 

結局は、あなたご自身が愛車をきちんとメンテナンスしなければ、

正しい機能は有り得ないことを忘れないでください。 

 

 尚、サーキット等で激しい走行をする人は、

速度域が目まぐるしく変わるので、点火の上でも厳しいので

常にベストコンディションを保てるようにすることが何より重要になります。 


 

◆次の第3章ロータリーエンジンとプラグの負担の関係、劣化、熱価数について 」を

 読まれたい方はコチラから!

 

ロータリーエンジンは燃焼室になぜ2本のプラグがあるのか?

 

 一般的なレシプロエンジンの場合は、1つのシリンダーに対して

1本のプラグが装着されています。

 

要するに、1つの爆発する部屋に1本のプラグという訳です。

しかし、ロータリーエンジンの場合は、

1つの燃焼室に2本のプラグが装着されています。

 

これはどうしてなのでしょうか? 

 ロータリーエンジンも燃焼室内の混合気が爆発するのは

「上死点」と言われる付近での爆発となります。

 

この「上死点付近」の時、燃焼室内の混合気は最も圧縮された状態で、

その容積量は、最少値となります。

エンジン構造の差やプラグの点火時期は、若干レシプロと異なりますが、

爆発工程は、特に変わりなく

「吸入→混合気の圧縮→爆発→排気」と同じではありますが・・・、

 

レシプロエンジンのように1つの燃焼室に対して1本のプラグ

による点火ではないのは、燃焼室の形状がレシプロとは違うからです!

  

レシプロは、シリンダと言う狭い部屋に混合気が圧縮され

燃焼室が動くことはありません。

 

しかし、ロータリーエンジンは・・・、

 

三角型のローターの側面が燃焼室になり燃焼室の形状が縦に細長く、

しかもローターは回転しているから、その形状と容積が常に変化しています。

このよに燃焼室が動いているから、

あらゆる走行条件でも常に最適な爆発が起きるように、

1つの燃焼室に2つのプラグを設けているのです。

ただ、2本のプラグが同時に点火して同じ威力だと、

燃焼室が高温になり過ぎ弊害が起きるから、

燃焼室の形状に合わせて縦に2本プラグを設けて、

それぞれのプラグの点火のタイミングを変えているのです。

 

  基本的にファミリカーより過酷に走るスポーツカーであっても、

どんな人が乗っても、どんな状況でも正しく動くように作られているのです。


 

◆次の第2章ロータリーエンジンにおける燃焼室とプラグの関係」を

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